きぶくれ

わたしには生活というものがひどく不快で、眠るように過ごせたらと思うことが多々ある。あさ、目が覚めて、食事を取る。そうしないと生命活動を続けられないから。ひる、よると続ける。喉が渇くから水分を取る。身綺麗を保つために、顔を洗ったり、風呂に入…

ゆきがとけたら

その日は、もう春がやってきたんじゃないかと思うくらいあたたかくて、積もった雪も溶けはじめ、軒先からはぼたぼた雫の落ちる音がした。道路もアスファルトが見えるほどになり、あちこちに水たまりができていた。本屋からの帰り道、雪に反射する光に差され…

海に出られない漁師は網を繕う

ここ数週間ほど、夜半から朝にかけてどうも胸が痛い。呼吸がしづらいのはあるが、苦しい、というよりは痛いが正しいように思う。痛むのはきまって胸の中心あたりで(丁度ふたつの乳房の間だ)、突然殴られたような重い痛みが続く。深呼吸をすればおさまると…

浮かぶような日々を

鴨が水面に浮いていた。揺蕩うとか言うのが正しいのかもしれないが、直感的に、あ、浮いている、と思った。秋の池は透明度が低いからだろうか。ぼうっと気を遠くにしていると、紅葉を待たず落葉してしまった葉と、自我があるのかないのかわからない眼差しを…

幸せ恐怖症

わたしはいつだって何かを恐ろしく感じ、忌避していると思う。きらきらと輝くものなんて特に怖いのだ。 明るい人が怖い。明るいまま過ごすなんてわたしには苦行だから(無意識に偉いなあって引け目を感じてしまう)。明るい家庭が怖い。わたしはそんなの馴染…

外に閉じこもって朝が来て

人の心の内など見えない。それは己のものであってもそう。ふっと見えなくなる時が来るというよりは、見えることの方が稀有だと思っている。何か食べ物を買うためにコンビニに来たのに、空腹なのに、ここにわたしの欲しいものはないので買わない。それと似た…

生きているだけで

生きているだけで疲れる。 これはわたしの為の映画だと思った。そんな人たくさんいる? 知るか知るか知るか。わたしの為の映画だ。 最近、仕事を辞めた。元々固定職に就いている人間ではないけど、おそらく世間一般の大多数が想像するよりはわたしは仕事を変…

死ねない人の遺書

夢と現実の境がわからない。わからなくなることで飯でも食えたらよかったが、未だそういうわけにもいかない。困った。死んでも何も可笑しくもない年齢になったとも思うし、まだまだ盛りで、死んだら死んだで面白可笑しく言われるような年齢だとも思える。こ…

彼女の世界の片隅であっても

祖母が亡くなった。もうすぐで誕生日を迎えられるかと思った矢先のことだった。命日である今日は通夜の準備に駆り出されることもなかったので、これを書き始めた。ある程度覚悟できていることだったからだろうか。今現在、胸の内はやけに静かである。わたし…

愛を愛たらしめるもの

自慢でもなんでもないが、気持ちを言葉にすることが苦手みたいだ。聞いて驚け。そんなことにもなんと最近気がついたのだ。「ありがとう」や「ごめんなさい」は礼儀だと思っているので、家族にも友だちにも日常的に言ってる。社会人をやっている分にも問題な…

どこかへ行きたしと思えどもどこかはあまりに遠し

ああ、現実があまりに近くなってしまった。現実があまりに近くなると、やわな感性がふらっとどこかへ往く。そんなときに超大型連休がやって来るというのだから、タイミングがいい。ここまで長期間の休暇をもらってしまうと非正規雇用社員は生活が苦しくもな…